こんにちは、伊藤慧哉です。先日、NPO法人ピアサポートつむぎさんにヒアリングに行かせていただきました。どんな団体さんなのかこちらで紹介させていただきます。
NPO法人ピアサポートつむぎについて
つむぎさんは発達障害、不登校、ひきこもり等困難を抱える当事者の方やその家族に向けた支援を行っておられます。とくに事業の核となっているのは居場所づくりです。倉吉市の古民家をDIYで修理し、そこを拠点として活動を行っておられます。
NPO法人ピアサポートつむぎ
住所:鳥取県倉吉市小田79番地15
HP:こちら
NPO法人ピアサポートつむぎさんは、発達障害の親の会「保護者のピアサポートの会」と、不登校・ひきこもりの親の会「虹の会」という不登校の子を持つ親の会が共同して生まれた団体です。スタッフは専門職の方をはじめ様々な知識・技術を持っておられ、また困り感を抱えるお子さんがいらっしゃる方も在籍しておられます。そのため、より当事者の方やご家族に寄り添ったサポートをされています。

活動事業について
・居場所の提供と相談支援
親の会を母体とする団体でもあるため、困難を抱える当事者やその家族の相談を基本として受けています。とくに家族関係では、本人と家族それぞれの考え方が「自分にとっては正しい」ものであっても、認識のズレから関係が硬直してしまうことがあります。そのような家族関係の修復に向けたサポートも行われています。
・家族向けトレーニング・勉強会
ペアレントトレーニングやアンガーマネジメントなどを通して、特性を持つお子さんへの理解や関わり方を学ぶ機会を提供しています。
たとえば、突然の不登校により親が不安やプレッシャーを感じ、「ちゃんとしなさい」「なぜ学校に行かないの?」と声をかけてしまうことがあります。しかし不登校のお子さんにとってはエネルギーが消耗している状態であり、そうした言葉がお子さんをさらに追い詰める結果につながる場合があります。
ペアレントトレーニングを通して親の関わり方が変わることで、半年ほどで親子関係が改善し、お子さんの状態が安定してくることもあるようです。
また、つむぎさんでは親だけでなく、祖父母向けの「じいじとばあばの勉強会」、父親向けの「父ちゃんの会」も設けています。特に子どもと接する機会が多い母親が一生懸命学んで取り組まれることが多いものの、家族内でうまく理解が広がらないというケースもあるため、家族ぐるみで受容的な関わりを学ぶことが重要だそうです。
・本人向け活動
「本人の会」として、困り感を抱える当事者同士が交流できる場を提供しています。同じ立場の人の話から共感や学びが得られ、特性への理解や受容が進み、「自分はこれでいいんだ」と思えるようになります。
交流の場では、世代を超えた関わりができるようにしたり、「相手の話を遮らずに聞く」などのルールを設けたりすることで、実生活にも活きるコミュニケーションの練習を取り入れています。
昨年度は、「学びの復権」と題して、読み書き障害など学習困難を抱える方への合理的配慮や周囲の理解を深める勉強会も実施されました。「書くことはできないが読むことはできる」など、本人の理解や表現方法を把握し、手段を変えることで学習への理解が進み、自己肯定感の向上にもつながります。
その他にも、定期カフェ、料理の会、工作教室、科学実験など、さまざまなイベントが開催されています。



この他にも、発達障害や不登校、ひきこもりなどに係る定期的な情報交換ができる場として定期カフェを開いたり、料理の会、工作教室、科学実験など様々なイベントも開催されています。
実施体制
現在の体制は、理事4名、監事1名、スタッフ22名がいらっしゃいます。
公認心理師、認定心理士、特別支援教育士、教師、保育士、 ケアマネージャー、社会福祉士、ペアレントメンター、 ゲームマスター、調理師、農業従事者、管理職、学生さんなど、様々な専門職や属性の方、また地域の方を巻き込んで活動を実施されています。
ピアサポートつむぎさんの強み
つむぎさんはカウンセリングの手法を用い、当事者だけでなく、その周囲の大人へのケアも含めたサポートを行っています。この分野は必要性が高まりつつあるものの、現行の福祉制度では十分に制度設計がされておらず、医療・福祉機関でも個別対応にとどまるケースが多い状況です。
ペアレントトレーニングの講座も、親の会などのボランティアで運営されていることが多く、とくに祖父母や父親など対象を細かく分けて取り組む団体は県内でも珍しいとのことです。
団体としての課題
スタッフの多くが本業を持ちながら活動しているため、開所日は土日など限られた日のみとなっています。そのため、個別相談の時間もスケジュールを調整しながら何とか確保している状況だそうです。
また、児童相談所など専門機関から紹介を受けることもありますが、開所日が限られているため連携が十分に行えないという課題もあります。相談業務はご家庭のセンシティブな内容に関わることが多く、専門知識や経験を持つ人材の確保やスタッフの時間確保、そして資金面が大きな課題となっているとのことでした。
自分が面白いと思った点
今回お話を伺い、不登校やひきこもりの“本人”ではなく、”家族”への支援を積極的に行っている点がとても興味深いと感じました。また、子どもの発達段階に応じた講座や、父・母・祖父母といった対象別の講座を細かく実施されている点に手厚さを感じました。
今後、こうした事業を応援する補助金制度が拡充され、このような活動を行う団体が増えていけば良いと感じています。スタッフの方々もとても明るく親しみやすい方で、相談しやすい雰囲気がとても印象的でした。
