
2024年12月11日(水)、北栄町大栄農村環境改善センター(北栄町由良宿)でとっとりコミュニティ財団設立準備会による3回目のミートアップイベントが開催されました。そのイベントの様子をレポートします!
今回のテーマは「次世代を応援するしくみとしかけ」ということで、北栄町で活躍されている4名のゲストをお招きし、次世代支援について会場参加型で考えるイベントとなりました。
お越しいただいたゲストは以下の4名です。
大西浩嗣さん:エイ!ホクエイ 運営メンバー
大塚健一朗さん:エイ!ホクエイ 運営メンバー
林かりんさん:スポーツクライミングスピード日本代表
長曽我部まどかさん:鳥取大学工学部准教授
今回のイベントは以下の流れでした。
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とっとりコミュニティ財団設立準備会の趣旨説明
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「エイ!ホクエイ」大西浩嗣さんによるトークセッション
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ゲストらによるパネルディスカッション(モデレーター:長曽我部さん)
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会場からの質疑応答
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とっとりコミュニティ財団(仮)としてできる応援のカタチ
とっとりコミュニティ財団(仮)のねらい

まず冒頭に導入として、NPO法人bankup 代表理事 中川玄洋さんによる財団の趣旨説明がありました。
地域で活動している人が「何かやりたい」と思い立った時に、それを金銭的に支援する制度は少なからずあるものの、やはり自治体としては期間や金額などに限界があるというのが現状です。
とっとりコミュニティ財団(仮)は、民間の助成金としてやりたいことがある人の背中を押したい。少額支援や長期支援といった、公的機関にはやりにくい隙間の支援の確立を狙います。
また、隙間の支援を行うことで地域課題を見える化し、市や町の施策に生かすことも想定しています。
玄洋さんの話によると、とっとりコミュニティ財団設立に踏み出したきっかけは、2024年1月1日に起きた能登半島地震。コミュニティ財団のひとつである「ほくりくみらい基金」が2023年12月に公益財団法人化した直後に震災が発生し、発災直後にクラウドファンディングで資金を集め、復興へのハブとなる動きを目の当たりにしたのです。
本来の役割は財団としての日頃からの支援ですが、有事に発揮する裏のポテンシャルを見た時、鳥取にもこの地盤を作っていきたいと思ったと語っていました。
エイ!ホクエイの活動内容と「エイ!フェス」

次に、「エイ!ホクエイ」の大西浩嗣さんによる活動紹介がありました。
大西さんは総務省の「地域活性化起業人」として2023年3月に東京都から北栄町に来町し、現在は北栄町で若者支援を行う団体「エイ!ホクエイ」のメンバーでもあります。
「エイ!ホクエイ」は2024年6月29日に「エイ!フェス」を開催し、ゲストに有名インフルエンサーのロイさんを招いたり、ピッチ大会「ETTO」を取り入れたりするなど、一日で1600人の動員数を誇り、大成功を収めました。
そんな「エイ!フェス」は大西さんの小さな違和感から始まりました。
来町初期に町を知るために住民にヒアリングをして回ったところ、住民のそれぞれから個性とポテンシャルを感じた大西さんは、一方で、新型コロナウイルス感染症の蔓延を境にリアルな繋がりが乏しくなってしまっている現状を知りました。そこで、町民の対面での交流の場づくりを画策し、定例の飲み会を開催することから始めたそうです。
しかし、その飲み会には参加者も増え、継続こそしていたものの、若者の影が見えない。そこで再度住民にヒアリングしたところ、若者は祭りがあれば現れるという声を聞きました。ここで大西さんは、「若者を中心に何かできないか?」ということを考えます。
そこから有志の大人で「エイ!ホクエイ」を結成し、若者を応援したいという思いで注目度の高い「フェス」というスタイルのイベント開催を決めました。また、そこで行われた「ETTO」というピッチ大会では、若者の声をピッチという形で引き出し、参加者の皆で若者のアイデアを聴くという場を創出しました。
「エイ!フェス」を通じて、若者のエネルギーを目の当たりにした大西さんら運営チームは、ここを起点として若者の声に耳を傾け、もっと町に巻き込んでいきたいと言います。
北栄町出身の20歳:スポーツクライミングスピード日本代表の林かりんさんを取り巻く現状

トークセッションの後は、ゲストらによるパネルディスカッションに移り、様々な角度からの話題で盛り上がりました。ここでは主に、スポーツ選手である林かりんさんの活動とそれを取り巻く現状について紹介します。
林かりんさんは鳥取県北栄町出身の20歳で、現在はスポーツクライミングスピード日本代表として世界で活躍しています。
そんな林さんですが、決して近所に整った練習環境があるわけではなく、車で20分ほどかけて、隣の倉吉市にあるスポーツ施設に毎日通って練習をしています。
中学生の頃にクライミングを始めて以来、クライミング専門のコーチはつかず、独学で練習を重ねているとのこと。日本記録を樹立したのは17歳の時で、地元の高校に通いながらワールドカップに出場するなど、実力ある北栄町のスターです。
しかし、実力はあるものの活動資金と十分な練習環境がないという現実があります。理想としては、町として応援するという形をとりたいものの、簡単にできないのが現状。そこで、コミュニティ財団も含めて、地元のスポーツ選手を地域で応援する形について、参加者と一緒に考えました。
林さんはお話の最後に、「クライミングというスポーツの知名度がまだまだ低い。まずは林かりんの名前から知ってもらいたい。ぜひ名前を覚えて帰ってほしい。」と強く語りかける様子が見られました。
コミュニティ財団としてできること
最後にラップアップとして、玄洋さんから「コミュニティ財団としてできること」という視点でのお話がありました。
コミュニティ財団としてできることは、主に以下の4つがあります。
1.声を定期的に拾うこと
2.人を繋げること
3.資金的に支援すること
4.メディア機能となること
コミュニティ財団の強みは民間の財団であることなので、例えば、毎月エントリーを受け付けることも可能です。一般的な助成金などは応募が1年や半年に1回と機会が限られており、応援者が背中を押しきれず熱が冷めてしまうこともしばしば。コミュニティ財団は定期的な窓口となることによって、若者がチャレンジしたい時にチャレンジできる機会を創出します。
また、エントリーを通じて定期的に声を拾うことにより、提出されたプロジェクトを応援したい人を紹介できるというのもコミュニティ財団の強みになり得ます。財団を面白がってくれる人の数だけ応援者は増えるので、そこから人を繋いでいくことができます。
コミュニティ財団の設立によって、いろんな形でチャレンジしたい人の背中を押すことができます。コミュニティ財団を介して、活躍する人が背中を見せていく、その背中を見た人が追っていくような、良い循環を生んでいきたいという言葉で、本イベントは締めくくられました。
イベントに参加して
私がイベントに参加して、感じたことが2つありました。

一つ目は、ここには大きなポテンシャルがたくさん眠っている可能性があるということです。パネルディスカッションの中で、「エイ!ホクエイ」の大塚さんが「地方だからとか、関係ない」と言っていたのが印象的でした。地方は都市と比較して機会格差や所得格差があるが、そこをカバーできれば大きく不利ではないという意味です。私自身も地方の出身で、お金と機会で悔しさを感じることが多々ありました。しかし、コミュニティ財団のしくみでそれを打破していける可能性を考えると、とても大きなポテンシャルがここにはあるのではないかと胸が踊りました。

二つ目は、若者のポテンシャルを正面から受け止め、そこにもがこうとしている大人たちがいることの重要性です。「子どもに教えることはない、引き出すのが大事」という話がありました。ついつい「話して」しまう大人が多い中で、彼らの考えていることを「引き出す」ことができる大人の存在があれば、それだけで子どもは、未来は変わっていくと信じています。若者の声をそのまま聞ける大人がいて、その輪が広がっていき、純粋に真剣に大人が子どもを応援する。コミュニティ財団のしくみが、そんな町の馬力を増す存在になれたら、と思いました。
まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は、北栄町で行われたコミュニティ財団ミートアップイベントのレポートとして、「エイ!ホクエイ」の若者を応援する仕掛けのお話や、日本代表スポーツ選手をとりまく現状、そこから見えてくる若者支援の可能性についてまとめました。
コミュニティ財団について気になる方は、noteやSNSをフォローし、引き続き情報をチェックしてください!
以上有賀さんの素敵なレポートでした!有賀さんありがとうございました!レポートにも書いていただきましたが、ぜひ今後のコミュニティ財団の動きにもご注目ください。
